朝鮮というと、貧しい貧しいという言葉が頭に出るが、沿線の農村を見る限りは、そこまでの窮状ぶりは窺い知ることはできない。むしろ、地域によっては中国の農村のほうが貧しいのではないか、という感じも受ける。新義州の駅では、中国で言えば「盲流」というような感じの平壌に向かう人々を目にし、やはりここは中国ではなく、朝鮮なのだ、という思いを持ったが、餓死者が数多く発生しているという切迫感のような所まではなさそうな気がする。ただし、一方で、この地域は地理的に恵まれている地域なのではないかという気もする。まず、この辺りは、かなり平原が多い。山岳部の多い朝鮮の東北部とは少し事情が異なっている気がする。