モイナク。アラル海の海面低下によって砂漠と化した港町。今回の旅で特に行きたかった場所の一つ。旧ソ連時代の灌漑事業により引き起こされたアラル海問題は、砂漠化にとどまらず、塩害、農薬による汚染、それにともなう近隣住民の健康問題と、複合的かつ大規模なものになっている。ヌクスからモイナクへ進むに従って、水のない用水路、塩害により放棄された畑が増えていった。町の様子は意外に活気があったが、町はずれには錆び付いた船が打ち上げられ、その横を牛が歩いている。足下には貝殻が転がっている。白くたなびく雲の下で、転がっているという表現が似合う無造作に放置された船。街は決してゴーストタウンではなかったし、決してこの世の果てではなかった。彼らに幸があらんことを。