ヌクス。ウズベキスタン西部の基点となる街。カラカルパキスタン自治共和国の首都。アシガバードが社会主義の表の顔とすれば、ここは裏の顔。これほど生気のない街は初めて。このように錆び付いた水道管がおどろおどろしく道をまたぎ、同じ形をした建物が街には並んでいる。アラル海を始め環境問題の結果、この自治共和国においては幼児の10人に1人は死亡しているという。そういう先入観も手伝って、街の人も暗い印象に見え、僕には「希望を失った街」といった感じに映った。街の人には、ヌクスに来て何で魚を食べないんだと言われたこともあったが、正直チャイを飲むのすらためらわれた。宿にはアリが大量発生していてネズミまで出るわ、日帰りで行こうと思ったクニャ=ウルゲンチには行けず国境で100ドル警官にすられるわ、タシケントに向かったバスが途中で故障して引き返されるわで、なかなかさんざんな目にあった。警官が金を抜くというのは話に聞いていたが、もめた挙げ句これ見よがしに銃に弾を込め始めた警官を見て退散。僕にとって、この街は鬼門だったらしい。